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たがや


【登場人物】
たが屋さん=箍(たが)
殿様

【概要】
 川開き当日の両国橋は隅田川の花火があるので大変な混雑。「玉屋~」「鍵屋~」の掛け声。仕事帰りの、たが屋さんが道具箱を担いで本所方へ渡ろうと橋に差し掛かると、押されたはずみに道具箱を落としてしまった。その拍子に道具箱に結び付けてあった「たが」が弾けて、本所方から来た馬上の殿様の陣笠を跳ね飛ばしてしまった。

 『無礼者めっ! 屋敷へ参れ!』と怒る人払いの供のサムライ。『ウチには年を取ったお袋と親爺が私の帰りを待っております。親に対して勘弁して下さい』と謝るたが屋。『年寄りがいるって~じゃね~か。勘弁してやったらど~で~』とそれを見ていた群集。

 サムライは、『屋敷へ参れ!』の一点張り。「窮鼠猫を噛む」の例えがございますが、たが屋さんは開き直って啖呵を切った。『なに! 屋敷へ来いだっ。屋敷へ行ってどうすんでぃ。屋敷へ行ったら命がねぇさ。さあ、ここで斬れ! 斬ってみろ!』。

 たが屋さんの威勢に、『おのれ下郎!』と武士が斬り付ける。日頃手入れをしていないから刀が錆びていて、なかなか抜けない。たが屋さんは命を捨てているから八面六臂の大奮闘。三人のサムライをやっつけちゃった(^o^)丿。群集は威張っている武士に対して不満を持っているから、たが屋さんに加勢して石を投げつける。殿様は槍を取って、たが屋さんに向かうが、石が飛んでくるから思うように動けない。たが屋さんが、サムライから奪った刀を横に払うと、殿様の首がスポーンと飛んで宙に上がった。それを見ていた群集は一斉に、『た~がや~』。

【雑感】
 いやはや何とも、実に落語らしい痛快な噺です。よ~く考えると随分無茶苦茶な噺です。この殿様の一行は、合計5人です。供のサムライ三人と、殿様と、殿様の槍を持っていた従者です。一行で助かったのは、この従者一人です。たが屋さんは水戸黄門の助さん格さんとは違って、武術などまったく知らない只の職人です。それが四人のサムライをやっつけちゃうのが落語です。

 今年の隅田川花火大会は7月28日でしたが、安永の頃は5月28日と決まっておりました。享保二(1717)年に始まったと云われますが、5月28日は両国の川開きで、その日に花火をやったと云う事です。

 多くの「古典落語」は上方に起源がありますが、この演目は、純粋な江戸古典落語です。この演目のテーマは武家と職人のトラブルです。武家の多かった江戸ならではのテーマで、商人の町大阪にはこのようなテーマはありません。

 サゲは、「た~まや~」の花火の掛け声と、「たが屋」の引っ掛けです。『橋の上 玉屋玉屋の 声ばかり 何故か鍵屋と 云わぬ情無し』。二大花火屋ながら、「玉屋」ばっかり褒めて「鍵屋」の声が無い。「かぎや」の音が云い難いからではないか・・・。玉屋は、天保14(1843)年に火事を出した為に、取り潰しとなっています。しかし、それ以降も慣習的に「た~まや~」が花火の掛け声になっています。

 データ・・・三代目 三遊亭金馬 明治27(1894)年10/25~昭和39(1964)年11/8 享年70 前名=三遊亭圓洲 出囃子=かっこ 本名=加藤専太郎

コメント

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またまた、帰ってきてからのお楽しみです。けど「たがや」・・聴いた事があるような・・・博士のところで・・・???。

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*きゃんさん。。
夏の定番落語ですから・・・きゃんは、去年、志ん生師匠のを聴いてますね^^
金馬さんも上手いけど、この演目に関しては、志ん生師匠に敵う噺家さんはいないと思います。たがやさんの太刀回りを、どのようにダイナミックに口演するかがキモですね^^

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日舞にも「玉屋」はありますが「たがや」や「鍵屋」^^はありませんね~! 日舞の玉屋は丸い柄の傘を持って踊りますが、「たが」を持っては^^踊れませんね。
何でも普段からのお手入れは(^・^)大切ですね!
色んな見物人が^^面白い!
火事と喧嘩は大きいほど面白いって~とこですかね(*^^)v

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あ!!そうか(^・^)♪。去年聞いたんだったんですね。
たがが外れると、バラバラになって収集が付かなくなりまシュね(^・^)♪

角福戦争???

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*お菊さん。。
さすがに私は、日舞の事までは知りませんので・・・お菊さんには敵いません^^
江戸時代の身分制度と云うのは、現代人には、判りにくいですが・・・武士は、武士の名誉を守るためならば、人を殺傷しても、お咎め無しだったんです。
現代日本には、身分制度はありませんが・・・人種を含めて、身分制度のある国の方が多いんです。日本くらい、安全で幸せに暮らせる国はないのに、この日本が嫌いだと云う人がいるのには困ったものです。そう云う人達は、外国へ行って、日本以外の国が、如何にひどい状態なのかを見てきたらよろしい^^

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*きゃんさん。。
よく憶えてませんが・・・確か、アニメの動画も上げてあったと思いますので、検索してみて下さい^^
「角福戦争」は、きゃんには、ちょっと難しいかな^^
昔の自民党の、田中角栄と福田赳夫のバトルの事です^^↓

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*続き。。
それを全部説明するには、一万字では書けないので、ダイジェストしますと・・・
現在の安倍総理は、福田派のプリンスで、総理候補だった安倍晋太郎の二男。前総理の小泉純一郎は、1970年より、福田赳夫大蔵大臣の書生。旧「清和会」と云うのは、福田派の派閥で、福田派→安倍派→三塚派→森派→町村派・・・と現在は名称を変えていますが・・・小渕総理(佐藤派→田中派→竹下派→小渕派)が急死したあと、福田派の流れを汲む森派が、旧田中派を抑えて、自民党の政権を握って来ています。
一方、田中派はどうなったのか?自民党に本流として残ったのは、橋本龍太郎で、渡部恒三・小沢一郎は、自民党を出て、新進党と云う政党を作ったりした後、現在は、民主党となっています。かつて、2ヶ月しか総理に留まれなかった羽田孜も、現在は、民主党最高顧問になってます。
つまり、現在の政界の構図は、自民党旧福田派(自民党)対自民党旧田中派(民主党)と云うメンバーなんです^^

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そうですね~!
外国に比べると、まだ、治安も良いほうですし
貧困生活者がいると言っても、ホームレスをしてでも
生きていけるのですからね~!
働かなくても日本人は食べていけるのですから
ますます、勤労意欲は薄れていく若者は増えそうですね!
議員さんたちも、裕福な家庭で育っておられる方ばかりですので本当に庶民の苦しい立場と言うのは、わかっているのでしょうかね~(@_@;)

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「玉屋」は清元でしたね。シャボン玉売りのお兄さんの踊り。
花火の玉屋は江戸追放になって断絶したので江戸っ子は思い入れが深いのでしょうね。江戸っ子は判官贔屓ですからね。
実力があったのにたった一代で花火のように消えた「玉屋」への愛情を示したものでしょう。「情」に「錠」をかけており、「鍵屋の声がねぇのもしかたあるめぇ。錠がねぇんで口が開かねぇ」という詠み手の洒落を含んでいたのでしょうね。

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とっても解りやすい解説をありがとうございました。
けど、派閥というのは、きゃんにとっては四次元迷路のようです。(((^^;

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タガがはずれるととんだことになっちゃうものなんですね(´p`)プププ☆〃
金馬師匠の独特の語り、声を聴くとすぐわかりそうになってまいりました!

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*お菊さん。。
多くの国の死因のトップは、餓死に関連するものです。日本でも、餓死者がいない訳じゃありませんが・・・せいぜい、年間、数十人のレベルです。
生活に関する不満を云ったらキリがありません。アダム・スミスの「なんとか(^ω^)」って~理論を学生の頃に勉強した記憶もありますが・・・結局、人間の欲望ってのは、キリがないんです。
「Pie in the sky」つまり、「天国のパイ」ってのが、米国の黒人奴隷たちに宗教を浸透させた、キリスト教の戦略です。「欲しがりません勝つまでは」ってのも同じで、大日本帝国軍の洗脳戦略でしたね^^
イデオロギーなんて云うのは、「絵に描いた餅」と同じ、プロパガンダであって、政治に依って生活が良くなるだなんて云うのは、政治家の誤魔化しです^^
少なくとも、国政レベルでは、誰が議員になっても同じです。議員に依って生活が向上するのは、村会議員のレベルまです^^

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kukuku....納得!
主人のおじさんが以前「村会議員さん」でして、「この畑を通る道はワシが作ったから、島の者は、村上ロードとよんどるよ!」などとおっしゃって笑っておられたことがありました!今はご病気を色々併発され前回の選挙を最後に引退されのんびりしてらっしゃいますが、絶えず、村の方がお家に来られて、いろんな相談にのっておられましたね!
自分の生活は!自分で守らねばイケマセンネ!

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*しゅうさん。。
「玉屋は清元」・・・そんな事、私に云われても・・・知~らない^^
しゅうさんは、お菊さんと話が合いそうですねぇ。お菊さんは、三味線や琴のお師匠さんですが、一年以上私とブログでお付き合い下さっている、もの凄く気さくな方です^^
花火屋の「玉屋」は、「鍵屋」の分家らしいですね。一般の江戸庶民にとっては、「玉屋」が作った花火か、「鍵屋」が作った花火かは判らないから、掛け声の掛け様が無かったはずなんですが・・・一説には、両国橋を境にして、上流で「鍵屋」、下流で「玉屋」が花火を上げたらしいんです。
「橋の上 玉屋玉屋の 声ばかり 何故か鍵屋と 云わぬ情(錠)無し」ってのは、おそらく、蜀山人みたいな皮肉屋が作った狂歌なんでしょうね^^

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*きゃんさん。。
はは^^。政界=永田町ってところは、全校児童会みたいなところがあるんです(^ω^)
なかよし(子供と違って、銭や利権で繋がっている^^)グループってのがあって、常に勢力争いをしています。内閣の人事にしても、普通は、与党内をまとめるために、派閥均衡人事を図ります。現在は、自民党と公明党が連立与党を組んでいますから・・・野党第一党の民主党からの入閣はありませんが、与党第二党の公明党からは、大臣が一人起用されると云った按配です^^
現在の民主党の幹部たちってのは、かつては、自民党でした。旧田中派木曜クラブの流れを汲む、金丸(小沢)=竹下の経世会の反主流派となってしまった小沢さんと云うボスに、何人もの子分がくっ付いて、自民党を飛び出して漂流し、旧社会党や旧民社党のちり芥と結び付いて、民主党と云うグループが形成されています。↓

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*続き。。
もし、安倍さんが退陣して、内閣のナンバー2たる外務大臣の麻生さん(吉田茂の孫)になって、健康不安のある小沢さんに代わって鳩山さん(鳩山一郎の孫)が民主党代表になったりすれば・・・角福戦争以前の、鳩山一郎vs吉田茂の保保連合の再来のような感じになります^^

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*ffさん。。
落語と云う大衆芸能の難しさは・・・漫才と違って、過去の風俗・風習を語るところにあると思います。若手の噺家さんの中には、過去の風俗は現代人には判らないからと、現代風に直しちゃったり、説明落語に終始しちゃっている人がいます。
でもそれは、落語の伝統を壊す事であり、面白けりゃいいと云う事になって、落語が、単なる漫談になってしまうと思います。
歌舞伎や文楽は高尚で、落語は下品だと云われちゃうのは、格式を守るか守らないかの違いだと思います。歌舞伎を現代風にしちゃったら、新しいファンは増えるかも知れませんが、それは、伝統ある歌舞伎とは別物だと思います。
落語もそれと同じで、客は過去の風俗が判らなかったら、勉強すべきだと思います。その意味で、三代目 金馬師匠は、落語の伝統を守りつつ、工夫して判りやすく語っていると思います^^

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*お菊さん。。
今回の参院選の候補者のテレビ広報は、幾つか観ましたが・・・まあ、泡沫候補はしょうがないにしても・・・勘違いしてらっしゃる人がたくさんいますね^^
間接民主主義に於ける選挙区と云うのは、便宜上の投票区割りであって、国政レベルの選挙に於いては、地域誘導とか、特定の団体の主張を述べる場ではないのです。今回の当選者名簿を見ますと、そう云う人が何人か当選しています。
特定の地域や団体の主張をするのは、国会の場ではやってはならない事です。それだったら、自分の選挙区に、税金で、熊しか通らない道路を作ったり、新幹線の駅を作った人達と同じじゃないですか^^
そう云う事は、国税では無く、村税でやるべき事です。この国の未来を語れない人が、国会議員になってもらっては困ります^^

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この噺は、志ん生さんに三代目三木助さん、十代目馬生さんなども演じていますが、三代目金馬さんの「たがや」は、マクラで語る薀蓄にこの人のキャラクターがよく表われていますね。
因みに立川談志家元が、たがやの首を見事に飛ばした上に、「お馴染みの『たがやの花火』という一席でございます」と言って締める「たがや」をラジオで聴いたことがあります。

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*万年さん。。
この噺は、武士と町人のイザコザと云う、純粋な江戸落語だし、花火関連と云う事や、良く出来ている演目で、客の受けもいいし・・・って事で、噺家さんとしては、自分の持ち根多にしたい演目でしょうね^^
私も、三木助や圓楽さんの「たがや」は、すぐに耳に浮かんでくるんですが・・・談志さんのは・・・ちょっと浮かんで来ません^^
サムライの一行が5人と書いたのは、志ん生バージョンです。金馬さんは、馬上の殿様をやっつける前に、供のサムライを何人もやっつけるのは、単なる町人のたがやさんには、至難の技であろうし、冗長だとお考えなのか・・・単に口演時間が無かったのか・・・志ん生師よりも人数が少ないですね^^

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